普段のレッスンの様子~大人編~

わたしのレッスンに来てくださる生徒さんは、初心者から上級者までいらっしゃいます。
中でも「上級者」というと、要領よく上達できて、難しい曲でも器用に弾きこなしてしまうような

イメージがあるかもしれません。

それでもやはり、みなさんにそれぞれの壁(技術的に困難な点)があります。

壁というのは、初心者だけの話ではないのですね。

 

壁を乗り越えるためには、どうすればいいのか?

普段のレッスンは、その点に重点を置いて進めています。

 

今日は、レッスンの一例をご紹介します。

生徒さんで、小学生の頃にヴァイオリンを始めて、

かなり上手に演奏される女性の方がいらっしゃいます。

この方は、今までもコンチェルトや小品、オーケストラ曲などたくさんの曲を演奏されてきました。

それでも実は、長年にわたって、指がよく開かないというお悩みをお持ちでした。

 

この方は、わたしの教室には、数ヶ月前に体験レッスンにいらしていて、

目標とする曲や、その時点での演奏上のお悩みをうかがっていました。

ご説明によると、指が届かない音形は、指を開かせるのではなく、

舞うように忙しく動かして、弾くようにしていたとのことでした。

それでも目標曲を弾きこなすには、限界があるので、目標達成のための一番の近道として、

ご入会後、レッスンでは、基本姿勢の徹底と、基礎練習を一からやることにしました。

 

演奏姿勢を拝見すると、

この方の場合は、ファーストポジションでも左ひじを入れ込みすぎて、

左の親指が、楽器の竿のほぼ真下に位置して

楽器を支えるという姿勢になっていました。

そのため、左肩から左肘にかけて極端にひねった状態になっていました。

 

まず、体を極度にひねりすぎないこと。
無理な体勢では、指はよく開きません。

鏡を見ながら合理的な姿勢のとり方と体の動かし方をご説明し、

基本姿勢への矯正を行いました。

 

しかし頭では理解していても、長年ついた癖を直すのはとても大変です。

なので、鏡を見ながら良い姿勢(右肩と左肩の開き具合がほぼ同じ)を取っていただき、

そのまま音階や練習曲の一節をゆっくり弾いていただきました。

 

いつもと違う姿勢を取ると、それがたとえ正しいものであっても、

緊張して余計な力が入ってきてしまいます。

途中で楽器を下して、体をリラックスさせることを何度もやっていただきました。
また弾いている最中に、体のどこの部分に余計な力が入っているかをご指摘しました。

(これは、ご自分の体のことであっても、気付かないものなんです!)

 

基本姿勢への取り組みは、一見単純なようですが、じっくり行うのがベストです。

根気よく何度も繰り返しました。

 

それでも、レッスン日一日だけで、姿勢を矯正することはできません。

家でも同じように練習をしていただきました。

 

このような形でレッスンを継続し、基礎練習の難易度をその都度少しずつ上げていきました。

そしてついに先日!

指が届かなかった音形に、指の開きが間に合うようになりました、

との嬉しい報告を生徒さんから頂きました!

自分の指は開かないんだ、と当初は諦めていたとのことで、

本当に喜んでいらっしゃいました。

 

大人のレッスンの様子を簡単にご説明しましたが、普段このような形で進めています。

難しい!出来ないかも、と思われることでも、続けて練習すればいつか必ずできるようになる、

そんな方法を通常のレッスンでお伝えしています。