管楽器や弦楽器を美しく演奏するために、技術上最重要なことは、
正しい音程で演奏することだと思います。
しかし、この音程を取る作業というのは、目に見えるものではないため、
大変難しいものです。
そこでヴァイオリンの初心者の場合は、指板にシールを貼って音取りの目印にしたりします。
しかし、だんだん曲の難易度が上がってくると、音の種類も増えてくるので、
全部の音の目印を付けるわけにはいかなくなってきます。
いずれはシールをはがして、目印のない状態で音程を取らなければなりません。
結局、視覚に頼らないで聴覚を鍛えていくしかないのですね。
さあここからが勝負!いよいよ本題です!
正しい音程を取るためにはまず、調弦が合っていなければなりません。
ペグでの調弦は、初心者にはかなり難しいので、
全部の弦にアジャスターを付けて、
チューナーを頼りにアジャスターを使って調弦することをお勧めいたします。
次に音階、練習曲、曲での音程の取り方です。
お家に調律した鍵盤楽器がある方は、鍵盤楽器でヴァイオリンの曲等を弾いてみて、
音感を何となくつかむのも助けになるでしょう。
しかし、これはあくまで平均律(音程を均等な周波数比で分割した音律)の音程なので、
ヴァイオリンで使う純正律(純正音程のみを用いて規定される音律)の音程(いわゆる、ハモる音程)
とは若干異なります。
ええーっ!目も頼りにならない、ピアノもそれ程頼りにならないって、じゃあどうすればいいの??
と思われますよね?
はい。お答えは、
ひとつずつの音をゆっっっくり弾いて聴くことです。
最初はひとつの音につき、3つ数えて弾いてください。
そうすれば、正しい音程が自然に認識できるようになってきます。
(音程練習に集中したい場合は、最初はリズムを無視しても結構です。)
それから2つ数えて→1つ数えて→ゆっくりリズムを付けて、と練習します。
これは、今まで老若男女問わず、たくさんの生徒さんにレッスンしてきて、
例外なく皆さんの音感向上に役立った練習方法です。
ひとつの音につき3つ数えれば、不思議なことに、皆さんご自分で正しい音程を取られますね。
やはり、人間の耳に心地いいハモる音程は、ロングトーンで弾くと
自然にわかっていくものなのですね。
レッスン中に、講師に「そこの音程、もう少し高く!」「もう少し低めに」などと言われると、
生徒の皆さんは、指の位置をずらすことを考えて
「この場所が合ってる音程の場所だな!」
と、お耳を塞いだ状態で、指の場所を覚えることばかりを考えてしまいがちです。
しかし、ヴァイオリンの場合は、ミリよりも狭い間隔で音程を取らなければならなかったりします。
「正しい場所」と思っていても、押さえ方によっては音程がずれてしまうこともあるんですね。
だから、正しい音程で演奏するためには、まずはお耳を鍛えなければならないのです!
なので、音階にしろ曲にしろ、一音一音の音程を自分でろくに聴き取れない、速いテンポで何回も練習しても、
正しい音程で演奏できるようにはなりません。
いくつかの音の塊で形成されているパッセージも、塊でなんとなく聴くのではなく、
一音一音を聴き取って練習するのです。
また、音程練習をするのに、チューナーを使うわけにはいかないのか?
というご質問をたまにいただいたりしますが、これはわたしはお勧めいたしません。
やっぱり目に頼ってしまいますし、純正律の感覚が身につかないんですね。
チューナーは、あくまで最初の調弦の助けにのみ使用しましょう。
最初はひとつの音につき、3つ数えて弾いて、
2つ数えて→1つ数えて→ゆっくりリズムを付けて、という練習
根気は要りますが、お耳の感覚がクリアになりますので、
是非やってみてください!