部活動における奇妙な指導

久しぶりのブログ更新ですが、ネガティブネタです(すみません!)。

 

長年講師をしておりますが、今まで、部活動からヴァイオリンを始める中学生や高校生、大学生の個人指導をすることが少なくありませんでした。

ほとんど全てのパターンとして、部活に入ってはみたものの、まったくの初心者なのにいきなりシンフォニーなどの難しい曲を弾かなければならず、困って個人教室に来た若い人たちの指導をするというものでした。

 

かなり無理がある状況なのですが、誰もかれもが幼少のころからヴァイオリンを習う機会に恵まれるわけではありませんし、オーケストラに憧れる気持ちもよく理解できますから、わたしはヴァイオリンを始めるきっかけが、部活動であることを否定はしません。

むしろ、仲間がいて切磋琢磨することで、個人でいやいや練習しているよりもずっと伸びることがあります。

 

しかし、ここで問題になるのは、きちんとヴァイオリンを指導できる先生が部活にいない場合に起こることなのです。
今まで何度かそういった問題にぶつかりましたが、残念ながら生徒自身は、素人の先輩から受け継いだおかしなフィンガリングやボウイングを疑うことなくまじめに習得しようとしてしまい、

「先輩」や「(専門家ではない)顧問の先生」を絶対として、

まったく頓珍漢な奏法で弾いていることに気づくことができないのです。

例えて言うならば、海外で出される奇妙な日本食を、日本人ではない方が、

よく知らずに、こういうものだと思って食べているような感じです。

 

専門家を各学校に配置することは、いろいろな理由から無理といえるでしょう。
しかし、せっかく楽器に出会ったのに、間違ったやり方を刷り込んでしまうのは、

傍から見ていてとても腹立たしく悲しいものがあります。
せめて、専門家の指導を個人的に受けることになった場合は、

「でも先輩がこう言っていました」「顧問の先生がこう言っていました」と盲信的にならずに、聞く耳を持ってくれたらと思います。

 

最後に、専門教育を受けたヴァイオリニストは絶対にやらない、なぜか部活(弦楽器専門教育者がいない)で指導される奇妙な教えを記述します。

 

:弓の毛に松脂を塗った後、(弓の毛を下向きに)弓のヘッド部分を手の平などにぶつけて、ポンポンと叩く

 

というものです。

これ、弓に悪いので、プロのヴァイオリニストはこんなことは絶対にしません。

コルレーニョという、弓の木の部分で演奏する奏法でさえ、弓に悪いので、みんなあまりやりたがりません。

 

毎日毎日練習を開始するたびに、なんでこんなことをするのでしょうか?

塗りすぎた松脂を落とすため?
もしそうだとしたら、塗るときに量を調整すればいいだけの話だと思いますが。

念のため、知り合いのプロオーケストラの奏者やフリーランスの演奏家の方たちに、

この弓を叩く行為について聞いてみましたが、みんな目が点になっていました。

「なんでそんなことするの?」

今まで、よく知らずにこの行為をしていた方は、弓を痛めてしまうので、

弓を叩くことはやめましょう。

仲間と練習時間を共有し、楽しく演奏することは素晴らしいことです。
そしてそこに、正しい知識や奏法を身につけることも不可欠なこととして、
部活動を楽しんでほしいと思います。