ヴィブラートのかけ方

音楽表現を豊かにするための演奏技法として、「ヴィブラート」があります。

ヴァイオリンでは指、手首、腕の3種類のヴィブラート奏法がありますが、

今日は、その技術云々の前に、ヴィブラートについての基本的な考え方についてお話ししようと思います。

 

まず、一番初めに書きましたが、ヴィブラートは音楽表現を豊かにするためのものです。

なので、曲を弾くにあたり、なんでもいいからヴィブラートをかけっぱなしにすればいいというものではありません。

言いかえると、ヴィブラートは必要な音にだけかけ、全ての音にかける必要はないということです。

 

技術をまだ身につけていないときは、ヴィブラートがかけられるとかっこいい!と思うと思います。

しかし、基本的な考え方がわかっていないと、技法を体得しても、何も考えずに、やみくもにヴィブラートをかけてしまいがちです。

初心者によくあるのが、本来の基本中の基本である音程の正確さがなく、

またボウイングも棒弾き状態(音になんの抑揚もない)で、ヴィブラートをかけるのにかかりきりといった演奏です。

クレッシェンドのボウイング表現が乏しく、それをヴィブラートのスピード変化でカバーしている演奏などもよく聞きます。

 

音程を正確に取って、ノンヴィブラートでも歌心のあるボウイング、そこに必要な音にヴィブラートをかける、

これが質の高い演奏です。

 

一番誤った考え方は、音程の不正確さをヴィブラートでごまかすものです。

この考え方を視覚的にすると、たとえば、

縫製のがたがたな服(音程が不正確)の上に、それをごまかすために、

なんのバランスも考えずにやたらとアクセサリー(ヴィブラート)を身につけるような感じです。

まるでセンスがなく、とても悪趣味なことがお分かりになると思います。

 

ヴィブラートを練習するに当たり、なぜヴィブラートをかけるのか?

表現として、どのようなヴィブラートをかけるべきなのか?

その考え方をきちんと整理することが大切です。