脱力 パート2

前回のブログから、一か月以上引っ張ってしまいました。

しかも今年最後の日になってしまいました。

待ってらした方、どうもすみません!

 

それでは、始めます。

巨匠ナルシソ・イエペス氏の「脱力」の真髄とはなにか?

 

前回お話した、ギタリストの荘村清志さんは、

40代後半頃から指が思うように動かなくなることが多くなったそうです。

そのスランプの中で、デビュー25周年の記念演奏会の準備をしなければならなくなりました。

 

完ぺきな演奏をしなければならないと焦り、細かいフレーズの練習をしつこく繰り返し、

作品全体を見通すことができなくなってしまったそうです。

本番当日も、音楽に対する表現欲が湧いてこず、

全世界に対して心を閉ざし、ただギターの弦をはじいているだけの人間だった、と。

 

この文章を読んだとき、「わかるなぁ」と私は思いました。

お客さんに聞いていただくために演奏するのに、ある種のエゴイストになってしまう。

緊張のあまり、お客さんを「無視」してしまう。

技術にとらわれて、心を忘れてしまう。

 

荘村さんは、このとき完全に打ちひしがれたそうです。

そして、イエペス氏の言葉を思い出します。

 

「力を抜いて、常にゼロの状態で音楽に向き合いなさい」

 

脱力とは、単純に「身体」の余計な力を抜くということではなく、「心」を柔軟にすること。

そして、音楽と真摯に向き合うことなのだ。

なんの鎧もなく、自分という人間そのものが、音楽と真っ向から向き合うことなのだ。

 

深い!

なんて深いんでしょう!

一瞬一瞬の練習でも、そのように音楽と向き合っていく。

一瞬一瞬が、とても濃いんです。

 

イエペス氏の「脱力の真髄」。

練習や演奏が惰性のようになってしまったり、

また自分にダメ出しばかりしてしまうと、

つい忘れてしまいがちですが、

これを胸に、私はヴァイオリンと向き合っていきたいと思います。

またそれを生徒さん達に伝えていこうと思います。

 

イエペス氏の脱力の真髄は、今年一番に沁みた考えでした。

 

2019年最後のブログになりました。

皆さま、良いお年をお迎えください。