インスタントラーメンと手打ちラーメン

今回の表題は、レッスンのブログにしては、似つかわしくない表題ですが、
これは、最近大人の生徒さんたちに伝えた、レッスンについての例え話です。

ここ10年ぐらいで、大人からヴァイオリンを始める方は全く珍しくなくなってきました。
当教室にも大人の方のお問い合わせは、多くあります。

今までの「ヴァイオリンは子供のうちから始めないと無理」といった固定観念が取り払われたのは、

非常に良い傾向だと思います。


ただ、レッスンを受けるにあたり、「プロを目指すわけじゃないし、大人の趣味なんだから!」ということで、
ちんたら基本練習なんかしないで、とにかくすぐに何か曲が弾けるようになりたい、と思う方が多いように思います。
またそういった要望を受けて

「始めて○○分できらきら星が弾けるようになります」といったスピードを謳った宣伝文句を見たりもします。


「楽器を習うんだから、すぐに曲が弾きたいに決まってるじゃない!」
はい、よくわかります。

曲が弾きたいから楽器を習うわけですよね。

当たり前です。


しかしですね、楽器を弾く場合、人間の五感のうち聴覚、視覚、触覚の三感を同時に使います。
安易にスピードを求めてしまった場合、この三感が磨かれるのかどうかは、とても疑問です。
演奏に対するこの三感が磨かれなければ、いくら趣味と言えど、まともな演奏はできません。

例え話ですが、おいしいラーメンが作りたくて、お料理教室に習いに行ったとしましょう。
「基本的なことはどうでもいいから、とにかく早く食べたいんですよね!」
とインスタントラーメンの作り方を習いに行くでしょうか?
わたしは、インスタントラーメンの存在そのものは否定しません。

ただ、コンセプトとしては、あくまでもスピードを求めた食品であると解釈しています。

おいしいラーメンの作り方としては、やはり手打ちラーメンの作り方を習いに行くのではないでしょうか?
器具をそろえ、おだしの取り方、野菜の切り方、製麺など、

基本中の基本を習わなければ、手打ちラーメンは作れない。
それにはやはり、ある程度の時間がかかります。
それを商品とできるのかは、また別問題です。

 

基本練習をやらされている間、生徒さんの立場としては、いつ曲が弾けるようになるのか?
と、先が見えない思いでいることもあると思います。

でも、インスタントラーメンと手打ちラーメンでは麺の腰が違うように、
「インスタント」のレッスンでは、やはりしっかりした音は出せません。

おいしい料理を作るためには、一番最初の下ごしらえが肝心なように、満足できる演奏をするためには、

 基本練習を欠かすことはできません。

これは、まったくもって遠回りなどというものでなく、絶対不可欠です。


わたしは講師の立場として、例えて言うなら、手打ちラーメンを自分で作れるようになって、

自分でも食べて満足し、他の人にも振舞えるレベルになるようなぐらいの演奏ができるようになってほしいと

思って、老若男女問わずにレッスンしています。